2020/03/01『やっちもねぇ』

やっちもねぇ……という言葉は倉敷でよく使われる方言です。意味は「くだらない」「つまらん」「そんなことやってどうなるんだ?」というニュアンスで使われます。

わたしはこの言葉が大嫌いです。若き頃、何かに燃えて目上に提案すると、決まって「やっちもねぇ」とよく一蹴されました。内容も聞かずに頭ごなしにこの言葉を使う人が許せなかった。今でもよく耳にしますが、わたしはなるべく使わないようにしています。しかしネガティブな人、つまらないことでため息をついてる人には効果的です。

うちの檀家さんにおしどり夫婦がいました。もう2人ともお亡くなりになりましたが、時々この夫婦のやりとりを思い出すことがあります。旦那さんは超ポジティブ、奥さんは超ネガティブ……極端な2人でした。

ある冬の日のことです。遍路のバスツアーに出かけました。この夫婦もご参加でわたしの席の後ろに座っていました。当時はインフルエンザが猛威を振るっていてドタキャンも多かった。マスクを着用しているお遍路さんもたくさんいました。車中で奥さんが「もしインフルエンザにかかったらどうするのとよ?」とわたしに聞こえるように言いました。すると旦那さんは「やっちもねぇ……仏さんの修行でそんな心配は要らん。毎日、ちゃんと拝んでるから元気で居られる。そうじゃがなぁ、おじゅっさん」とわたしに振ってきました。わたしは「まったくその通り」と答えました。奥さんは恥ずかしそうにハッとして、そのあとホッとした様子で微笑んでくれました。

篤信とはこれにつきます。寺社に仕える者はそれだけで良いんです。しっかりした信仰を貫いていれば「世間を脱けだした目線」を持つことが出来ます。その目線で、今の世情を透かし観れば、どんな問題も「やっちもねぇ!」と一蹴して菩薩行に専念出来るのです。少なくとも世論と一緒にギャーギャー言うことが仕事じゃない。今こそ不動の心で、冷静にすべてに対してゆったりと祈るべきだと心から思います。

 

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